x64 Windows 7で動画の変換・編集を高速化

x64 Windows 7で動画の変換・編集を高速化
= 64ビットアプリケーションでないとメリットは無さそうだが、その実態は如何か =
(2010.01.09作成)
  目的
     64ビット版Windows 7のメリットは、4GB以上のメモリを使用出来る事と、CPUのレジ
     (計算結果やメモリアクセス時のアドレス等を保持する空間)を 2GB以最大限
     出来る事にあり、大容量のメモリーを必要とする作業の高速が可能となる事にある。
     そこで、筆者が日常汎用している32ビット版動画関連ソフトの変換・編集を高速する
      
可能か?を検討してみた。
  マシン環境
    
32ビット版Windows Vista環境で実行した時と比べて、緑色の違いがあ以外はほぼ
      条件で検討した。

     
マシンは、Intel Core 2 Quad Q6600(2.40GHz)の自作パソコンで、
       DDR2(PC2-6400): 実質メモリ 3.25GB 6GB増量。
       GeForce9600GT(VRAM 512MB): Drive v190.38→v195.62 に更新。
     OS: x32 Windows Vista Home Premium(SP2)→ x64 Windows 7 Professinal
        のマルチブート。
    コーデック環境は、Preferred Filter Tweaker for Windows 7を使用する事により Vista
       Windows 7の 32ビットコーデック環境はMainConcept Audio Decoderを除き、
       とほぼ同様のコーデック環境とした(こちらを参照)。
       32ビット用の Huffyuvと Lame MP3は こちらの方法で、AC-3 ACMこちら方法
        64ビット版Windows 7 に導入した。

     
   素材は、PT1で録画した地デジ二ヶ国語音声の洋画番組(1時間54分)を元素材Aとして、
     
音声のみを変換出力し結合した MPEG2_AC3.tsファイル。
     但し、各項目で記載・断りのある場合はその限りではない。
  検討項目と成績
   I.各ファイル形式へ圧縮(14400x1080→640x360)・変換
    以下の筆者が常用する32ビット版動画関連ソフトについて、手短に結果を知りたい為に、
    上記素材を更に Murdoc Cutterで無劣化カットした4分59秒のクリップファイルを素材Bと
    した。
 
 動画変換ソフト
変換形式
x32 Windows Vista
環境
x64 Windows 7
環境
 AviUtl 0.99i2
 *拡張子.m2tsにリネーム
AVI
6分03秒
6分40秒(x1.1)
MP4/H264
8分13秒
8分39秒(x1.1)
WMV9
18分34秒
6分08秒(x0.33)
FLV4
7分06秒
6分53秒(x0.99)
 TMPGEnc Plus 2.5
  2.56
MPEG2
7分55秒
8分14秒(x1.0)
AVI
7分40秒
7分46秒(x1.0)
 TMPGEnc 4.0 XPress
 
4.7.4.299
MP4/H264
(2 Pass)
20分23秒
19分34秒(x0.96)
WMV9
5分32秒
5分20秒(x0.96)
FLV4
(2 Pass)
13分23秒
13分16秒(x0.99)
DivX
(2 Pass)
11分50秒
11分26秒(x0.97)
 VirtualDubMod
 1.5.10.2
MKV
4分16秒
4分11秒(x0.98)
 HandBrake 0.9.4
MP4/H264
5分41秒
5分28秒(x0.96)
MKV/MPEG-4
4分46秒
4分56秒(x1.0)

 Easy RealMedia
 Producer 1.94

RM
12分01秒
12分05秒(x1.0)
 NSV Batch Encoder
 4/19/03
NSV
4分47秒
4分49秒(x1.0)
 Mencoder_VP6 Set
FLV4
(2 Pass)
22分03秒
22分01秒(x1.0)
 DivX Converter 7.1.0
DIVX
4分40秒
4分40秒(x1.0)
 
 MKV, AVIの映像圧縮は、両環境同じ設定の XviDとした。
 MP4/H264とは、MPEG-4 AVC/H.264(H.264_AAC.mp4)形式を指す。
 (  )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
     Vista環境における AviUtlによる WMVへの変換は、何故か異常に時間が掛かったが、
      それ以外の32ビット版ソフトの変換・編集速度は両環境で大差なかった。
  
   II.AviUtlでDVDをアップコンバート
    素材
:自作のDVDビデオからVobUtilsを用いてリッピングした一つのタイトルファイルを特
       別に用意した 。
       ファイル形式はMPEG2_PCM.vobで、収録時間:5分10秒。720x480(16:9)
    方法:ノイズ除去フィルタ、バンディング低減フィルタMT、アンシャープマスクMT及び
       WarpSharpMTを適用して、720x480→1920x1080へアップスケーリングし、
       拡張 x264 出力(GUI)で変換した。
       詳細は、こちらの「AviUtlでDVDビデオをアップコンバート」を参照。  
 
 動画変換方法
変換形式
x32 Windows Vista
環境
x64 Windows 7
環境
 拡張 x264 出力(GUI)
  アップ用フィルタ 4種類
 +
720x480→1920x1080
MP4/H264
36分06秒
36分29秒(x1.0)
 
 (  )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
     両環境で変換時間の差異はほとんどなかった。
   
   III.DVDないしBlu-rayの構築
    1) 元素材Aを Murdoc Cutterカットした3個の素材B1, B2, B3: MPEG2_AC3.tsファ
      4分59秒5分11秒及び6分12秒=17分22秒を素材とした。
 
 オーサリングソフト
変換形式
x32 Windows Vista
環境
x64 Windows 7
環境
 DVD Flick 1.3.0.7
DVDフォルダ
& ISO
26分45秒
25分51秒(x0.97)
 Corel VideoStudio
 12 Plus
12.0.53.0
Blu-ray
フォルダ
4分53秒
スマートレンダリング
4分31秒(x0.92)
スマートレンダリング
 
 (  )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
    2) 素材:Xacti DMX-HD1000でFull-HDモード撮影したMPEG-4 AVC/H.264形式のファイ
       ル(トータルの収録時間:40分52秒)を、
     Corel VideoStudio 12 PlusでBlu-rayフォルダを構築した。
       詳細は、→「Corel VideoStudio 12 PlusのWindows 7での不具合」を参照。
     Blu-rayフォルダの構築に要した時間
 
 オーサリングソフト
変換形式
x32 Windows Vista
環境
x64 Windows 7
環境
 Corel VideoStudio
 12 Plus
12.0.53.0
Blu-ray
フォルダ
3時間52分
3時間32分(x0.91)
 
 (  )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
    3) 素材:Panasonic製のビデオカメラ HDC-SD9のHGモードで撮影してムーブした
       H.264_AC3.m2ts形式のファイル(13分01秒)を、
     HD Writer 2.5J for HDC(ビデオカメラ付属)で 4シーンメニュー付きAVCHD形式の
       DVDディスクにオーサリング・ライティングした。
 
 オーサリングソフト
変換形式
x32 Windows Vista
環境
x64 Windows 7
環境
 HD Writer 2.5J
 for HDC
AVCHD
DVDディスク
8分06秒
7分58秒(x0.98)
 
 (  )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
     いずれの32ビット版動画編集ソフトでも、64ビット版Windows 7環境の方がやや速い傾向
      にあるが有意な差ではなかった。
   
   IV.TMPGEnc 4.0 XPressでSpursEngine によるMPEG-4 AVC変換
     収録時間 1時間54分の元素材A:MPEG2_AC3.tsファイルを
    
TMPGEnc 4.0 XPress 4.7.4のSpursEngine
でMPEG-4 AVC/H.264(H.264_AAC .mp4)
     変換
したところ、両環境間で大差なかった。
 
 動画変換方法
変換形式
x32 Windows Vista
環境
x64 Windows 7
環境
 TMPGEnc 4.0 XPress
 
SpursEngine
MP4/H264
1時間47分
1時間43分(x0.96)
 
 (  )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
   V.MediaCoder 32ビット版と64ビット版CUDA H.264 変換
    32ビット版、64ビット版いずれも v0.7.2.4582のMediaCoderを使用して、
     4分59秒のクリップ素材BMPEG2_AC3.tsファイルをMPEG-4 AVC/H.264(H.264_AAC.mp4)
     へ変換した。
     *映像圧縮はCBR, 8000Kbps。プロファイル: High, Level :4.1に設定。
      x264エンコーダは、Preset:Fastとし、インターレース除去は行わなかった。
      CUDA H.264エンコーダは、通常使用されるB-Frames:2, CABACにブロック解除,インタ
        ーレース除去も行った。
 
 MediaCoder搭載
 エンコーダ
x32 Vista環境
x64 Windows 7環境
32bit版
64bit版
 x264エンコーダ
30分16秒
29分53秒(x0.99)
14分47秒(x0.49)
 CUDA H.264エンコーダ
8分12秒
8分42秒(x1.1)
6分07秒(x0.75)
 
 (  )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
     32bit版MediaCoderの場合は、両環境間で大差なかったが・・・
     64ビット版は、明らかに 32ビット版よりも高速変換が可能だった \(^o^)/
     なお、v0.7.2のMediaCoderのCUDA H.264変換は、GPGPUが充分に機能しない為
      v0.7.1で検討した場合と比べて期待外れの長時間を必要とした。
      収録時間 1時間54分番組の素材で検討した成績は、
      →「64ビット版Windows 7環境でMediaCoderのCUDA H.264変換」 を参照。
   
   VI.VirtualDub 32ビット版と64ビット版(AMD64)で圧縮・変換
    素材は、解像度14400x1080、収録時間 4分59秒クリップファイルを AviUtl で変換した
     に用意した Huffyuv_PCM.avi ファイル。
    *VirtualDub MPEG2_AC3.tsフイルを読み込めない・・・方策を見出せない

    VirtuaDub 1.9.8ないしVirtuaDub 1.9.8 AMD64ここから入手)を使用して、
     XviD、x264又はffdshow(MPEG-4)で変換。
     解像度 14400x1080→640x360(16:9)に
リサイズした。

     64ビット用コーデックの入手
      a)一括入手:こちらの「squid_80から AviSynthx64及びそのプラグイン、フィルタ共に、
       64ビット用エンコーダ(XviD, x264vfw, HuffyuvとLameACM, AC3ACM)
       の入手が可能だ。

       今回使用したエンコーダのバージョンは以下の如くで、32ビット用と64ビット若干設定
       内容が異なるが、ほぼ同じ設定条件で検討した。
       XviD:32ビット v1.2.127,2006.02.25、64ビット v1.2.127,2005.04.23
       x264vfw64:32ビット Core54,2007.01.26、64ビット Core36,2005.10.23
       Lame MP3:32ビット 2008.09.24 、64ビット 2007.08.06
      なお、以下も64ビットエンコーダとして利用可能。
      b)Lagarith Lossless Video Codec v1.3.20ここから入手)の.exeインストーラは、32ビ
       ット/64ビット兼用となっており、いずれもインストールされる。

      c)ffdshowは別途tryouts revision3124,2009.11.03の32及び64ビット用を使用した。
 
      Proxy Codec64 v1.00(ここから入手)
        64ビット版 VirtuaDub 1.9.8 AMD64が 32ビット用ビデオコーデックを利用うに、
        Proxy Codec64を使用し公式ページの記載に準じて登録した。
       下図は、VirtuaDub 1.9.8 AMD64で利用可能な映像圧縮コーデックを示す。
         32ビット用コーデックは、pxc0〜3...のコーデックとして導入されている
 
    成績
 
 圧縮・変換内容
 14400x1080→640x360
x32 Vista環境
x64 Windows 7環境
32bit版
64bit版(AMD64)
x32用Encoder
x64用Encoder
 Huffyuv→XviD
14分33秒
14分36秒(x1.0)
15分32秒(x1.1)
16分03秒(x1.1)
 Huffyuv→x264
17分53秒
18分16秒(x1.0)
18分08秒(x1.0)
19分56秒(x1.1)
 Huffyuv
 →ffdshow/MPEG-4
16分57秒
16分46秒(x0.99)
実行せず
22分23秒(x1.3)
 
 (  )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
      32ビット版VirtuaDubでは両環境間で大差なかった。
     
64ビット版では、32ビット用コーデックを借用した場合は
32ビット版と大差なかった。
      64ビット版で64ビット用エンコーダを利用した場合は、XviD, x264変換ではやや延する
       傾向にあり、ffdshow Video CodecのMPEG-4で変換した場合は 32%分に時間が
       掛かってしまった Y (>_<、)Y
   
    <蛇足>VirtuaDub 1.9.8 AMD64で変換中に、故意に変換を中止するとハードディスクの
      ボリューム(今回はEドライブ)のマウントが解除されて認識出来なくなってしまうトラブル
      が発生する事があるようだ(2回発生。再起動してもマウント不可)。
      ただ単にハードディスクが破損しかけているのかは不明だが、OS付属ツールの「エラー
      チェック」ではチェック・修復を実行出来ず、 Acronis Disk Director Suite10.0 の助
    
 け必要とした。
      もしVirtuaDub 1.9.8 AMD64が真の原因ならば恐ろしくて使用出来ない!(◎_◎)?

  
  結果と考察
   1)32ビット版動画関連ソフトの変換・編集速度は(AviUtlによる WMVへの変換以外は)、
     大差なく、ながら OS 32→64 ビット、メモリ 3→6GB としても、32ビット版の動画
     関連ソフトの明らかな高速化は認められなかった。
    TMPGEnc 4.0 XPress と Corel VideoStudio12 Plusは、やや速い傾向を示したが・・・
     微々たる差だった。  フィルタ処理を多用すれば差が見られたのかも知れないが、AviUtlで
     5種類のフィルタ処理を行なってみたが差異はみられなかった。
    これは、物理メモリを増量するとページングファイルの作成が抑制されて高速化する可能性を、
     今回の場合は期待出来なかっただけの理由なのかも知れない?
    なお、ある情報ではTMPGEnc 4.0 XPressによる WMVへの変換は 64ビット環境にするだ
     けで約20%高速化されたと云うが、今回の成績では 4%にすぎなかった。
   2)一方、32ビット版のアプリケーションはエミュレートによる動作となるのでパフォーマンスが低
    下する可能性があると云うが、極端に遅くなるソフトはなかった。
    これは、Windows 7 に搭載されているエミュレーション機能 「WOW64」(Windows-On-
    Windows64)の完成度が高く、パフォーマンスの低下が少ない為であろう。
   3)VirtuaDub 1.9.8 AMD64は 32ビット版と比べて、32ビット用コーデックを借用した場合は
    変換速度に大差なかったが、Proxy Codec64登録したコーデックのパフォーマンスは若干
    低下すると云う情報もある。
    残念ながら 64ビット用エンコーダを使用しても期待に反して好成績は得られず、むし
    ffdshowのMPEG-4で変換した場合は、32ビット版よりも劣る結果となってしまった。
   4)MediaCoderの64ビット版は、明らかに 32ビット版よりも高速変換が可能だった。
    今後はWindows用 HandBrakeの 64ビット対応版(近日リリース予定)についても検証してみ
    たい。
  結語
   
動画関連ソフトが 64ビット版Windows 7環境において恩恵を受けられるのは現状では64ビ
    MediaCoderに限られており、有用な64ビット版アプリの開発が望まれる。
 
  <参考>64ビット版Windows 7の他のメリット
    1)大量ファイルの転送速度は、64ビットOSで高速化が期待出来ると云うのだが・・・
    6.22GBの 1動画ファイルをコピーするのに必要な時間
 
 コピー先のディバイス
x32 Windows Vista
環境
x64 Windows 7
環境
 SerialATA接続内臓HDD
1分38秒
1分23秒(x0.85)
 USB 2接続外付けHDD
3分56秒
3分53秒(x0.99)
 ギガハブ接続外付けHDD
10分16秒
10分13秒(x0.96)
 
 (  )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
内臓ハードデスク間のコピーでは約15%高速化されたが、USB及びLAN接続HDDへのコピ
 ーには大差なかった。
   2)マルチスレッド処理(複数プログラムを同時に実行している時の応答)の高速化
     SuperFetch機能
:よく使うプログラムを前もって空きメモリに転送(先読み)する事でPC
      のスピードアップを図ろうという機能。Windows Vistaから搭載された。
     Vistaではメモリ食いとなって不評だったが、Windows 7では大容量のメモリの活用と素早
      いメモリの解放がされるように改良されていると云う。
     64ビット版OSでは大容量のメモリが使えるので、多くのメモリを要求するアプリケーショ
      ンや多数のアプリケーションを同時に作動させる際、HDDへのアクセスが 減り快適に使
     用出来るようになる筈だ。
    ⇒Windows X-P Modeの快適化
      大容量のメモリを消費するので、64ビット版OSでは割り当てメモリの容量を増やせるの
       で快適に作動するようになる筈だ。しかし、
      Windows VirtualPCでは、Full HD動画の再生は難しく、動画編集に使用出来るパフ
       ォーマンスを持ち合わせていない。
    ⇒VMware Player 3の快適使用
      VMware Player 3なら効果を期待出来る→「VMware Player 3.0 の性能」を参照。
     なお、いずれの仮想マシンソフトも 64ビット版Windows 7なら64ビットアプリケーションとして
      作動する。

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