目的
64ビット版Windows 7のメリットは、4GB以上のメモリを使用出来る事と、CPUのレジスタ
(計算結果やメモリアクセス時のアドレス等を保持する空間)を 2GB以上の最大限に利
用出来る事にあり、大容量のメモリーを必要とする作業の高速化が可能となる事にある。
そこで、筆者が日常汎用している32ビット版動画関連ソフトの変換・編集を高速化する事
が可能か?を検討してみた。
マシン環境
32ビット版Windows
Vista環境で実行した時と比べて、緑色の違いがある以外はほぼ同
じ条件で検討した。
マシンは、Intel
Core 2 Quad Q6600(2.40GHz)の自作パソコンで、
DDR2(PC2-6400): 実質メモリ 3.25GB→
6GB に増量。
GeForce9600GT(VRAM 512MB): Drive v190.38→v195.62
に更新。
OS: x32 Windows Vista Home Premium(SP2)→ x64
Windows 7 Professinal
のマルチブート。
コーデック環境は、Preferred
Filter Tweaker for Windows 7を使用する事により
Vista
Windows 7の 32ビットコーデック環境はMainConcept
Audio Decoderを除き、
とほぼ同様のコーデック環境とした(こちらを参照)。
32ビット用の Huffyuvと Lame
MP3は こちらの方法で、AC-3
ACMは こちら方法で
64ビット版Windows
7 に導入した。
|
素材は、PT1で録画した地デジ二ヶ国語音声の洋画番組(1時間54分)を元素材Aとして、
音声のみを変換出力し結合した MPEG2_AC3.tsファイル。
但し、各項目で記載・断りのある場合はその限りではない。
|
検討項目と成績
I.各ファイル形式へ圧縮(14400x1080→640x360)・変換
以下の筆者が常用する32ビット版動画関連ソフトについて、手短に結果を知りたい為に、
上記素材を更に Murdoc
Cutterで無劣化カットした4分59秒のクリップファイルを素材Bと
した。
|
|
動画変換ソフト
|
変換形式
|
x32
Windows Vista
環境
|
x64
Windows 7
環境
|
AviUtl 0.99i2
*拡張子.m2tsにリネーム
|
AVI
|
6分03秒
|
6分40秒(x1.1)
|
MP4/H264
|
8分13秒
|
8分39秒(x1.1)
|
WMV9
|
18分34秒
|
6分08秒(x0.33)
|
FLV4
|
7分06秒
|
6分53秒(x0.99)
|
TMPGEnc Plus
2.5
2.56
|
MPEG2
|
7分55秒
|
8分14秒(x1.0)
|
AVI
|
7分40秒
|
7分46秒(x1.0)
|
TMPGEnc 4.0
XPress
4.7.4.299
|
MP4/H264
(2 Pass)
|
20分23秒
|
19分34秒(x0.96)
|
WMV9
|
5分32秒
|
5分20秒(x0.96)
|
FLV4
(2 Pass)
|
13分23秒
|
13分16秒(x0.99)
|
DivX
(2 Pass)
|
11分50秒
|
11分26秒(x0.97)
|
VirtualDubMod
1.5.10.2
|
MKV
|
4分16秒
|
4分11秒(x0.98)
|
HandBrake
0.9.4
|
MP4/H264
|
5分41秒
|
5分28秒(x0.96)
|
MKV/MPEG-4
|
4分46秒
|
4分56秒(x1.0)
|
Easy RealMedia
Producer 1.94
|
RM
|
12分01秒
|
12分05秒(x1.0)
|
NSV Batch Encoder
4/19/03
|
NSV
|
4分47秒
|
4分49秒(x1.0)
|
Mencoder_VP6
Set
|
FLV4
(2 Pass)
|
22分03秒
|
22分01秒(x1.0)
|
DivX Converter
7.1.0
|
DIVX
|
4分40秒
|
4分40秒(x1.0)
|
|
|
MKV, AVIの映像圧縮は、両環境同じ設定の
XviDとした。
MP4/H264とは、MPEG-4 AVC/H.264(H.264_AAC.mp4)形式を指す。
( )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
|
|
Vista環境における AviUtlによる WMVへの変換は、何故か異常に時間が掛かったが、
それ以外の32ビット版ソフトの変換・編集速度は両環境で大差なかった。
|
II.AviUtlでDVDをアップコンバート
素材:自作のDVDビデオからVobUtilsを用いてリッピングした一つのタイトルファイルを特
別に用意した 。
ファイル形式はMPEG2_PCM.vobで、収録時間:5分10秒。720x480(16:9)
方法:ノイズ除去フィルタ、バンディング低減フィルタMT、アンシャープマスクMT及び
WarpSharpMTを適用して、720x480→1920x1080へアップスケーリングし、
拡張 x264 出力(GUI)で変換した。
詳細は、→こちらの「AviUtlでDVDビデオをアップコンバート」を参照。
|
|
動画変換方法
|
変換形式
|
x32
Windows Vista
環境
|
x64
Windows 7
環境
|
拡張 x264 出力(GUI)
アップ用フィルタ 4種類
+720x480→1920x1080
|
MP4/H264
|
36分06秒
|
36分29秒(x1.0)
|
|
|
( )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
|
|
両環境で変換時間の差異はほとんどなかった。
|
III.DVDないしBlu-rayの構築
1) 元素材Aを Murdoc
Cutterでカットした3個の素材B1,
B2, B3: MPEG2_AC3.tsファイル
(4分59秒、5分11秒及び6分12秒=17分22秒)を素材とした。
|
|
オーサリングソフト
|
変換形式
|
x32
Windows Vista
環境
|
x64
Windows 7
環境
|
DVD
Flick 1.3.0.7
|
DVDフォルダ
& ISO
|
26分45秒
|
25分51秒(x0.97)
|
Corel VideoStudio
12 Plus 12.0.53.0
|
Blu-ray
フォルダ
|
4分53秒
スマートレンダリング
|
4分31秒(x0.92)
スマートレンダリング
|
|
|
( )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
|
|
|
|
オーサリングソフト
|
変換形式
|
x32
Windows Vista
環境
|
x64
Windows 7
環境
|
Corel VideoStudio
12 Plus 12.0.53.0
|
Blu-ray
フォルダ
|
3時間52分
|
3時間32分(x0.91)
|
|
|
( )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
|
|
3) 素材:Panasonic製のビデオカメラ
HDC-SD9のHGモードで撮影してムーブした
H.264_AC3.m2ts形式のファイル(13分01秒)を、
HD Writer 2.5J for HDC(ビデオカメラ付属)で 4シーンメニュー付きAVCHD形式の
DVDディスクにオーサリング・ライティングした。
|
|
オーサリングソフト
|
変換形式
|
x32
Windows Vista
環境
|
x64
Windows 7
環境
|
HD Writer 2.5J
for HDC
|
AVCHD
DVDディスク
|
8分06秒
|
7分58秒(x0.98)
|
|
|
( )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
|
|
いずれの32ビット版動画編集ソフトでも、64ビット版Windows
7環境の方がやや速い傾向
にあるが有意な差ではなかった。
|
IV.TMPGEnc
4.0 XPressでSpursEngine
によるMPEG-4 AVC変換
収録時間 1時間54分の元素材A:MPEG2_AC3.tsファイルを
TMPGEnc
4.0 XPress 4.7.4のSpursEngineでMPEG-4
AVC/H.264(H.264_AAC
.mp4)へ
変換したところ、両環境間で大差なかった。
|
|
動画変換方法
|
変換形式
|
x32
Windows Vista
環境
|
x64
Windows 7
環境
|
TMPGEnc
4.0 XPress
SpursEngine
|
MP4/H264
|
1時間47分
|
1時間43分(x0.96)
|
|
|
( )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
|
|
|
V.MediaCoder
32ビット版と64ビット版でCUDA
H.264 変換
32ビット版、64ビット版いずれも v0.7.2.4582のMediaCoderを使用して、
4分59秒のクリップ素材B:MPEG2_AC3.tsファイルをMPEG-4
AVC/H.264(H.264_AAC.mp4)
へ変換した。
*映像圧縮はCBR, 8000Kbps。プロファイル:
High, Level :4.1に設定。
x264エンコーダは、Preset:Fastとし、インターレース除去は行わなかった。
CUDA H.264エンコーダは、通常使用されるB-Frames:2, CABACにブロック解除,インタ
ーレース除去も行った。
|
|
MediaCoder搭載
エンコーダ
|
x32
Vista環境
|
x64
Windows 7環境
|
32bit版
|
64bit版
|
x264エンコーダ
|
30分16秒
|
29分53秒(x0.99)
|
14分47秒(x0.49)
|
CUDA H.264エンコーダ
|
8分12秒
|
8分42秒(x1.1)
|
6分07秒(x0.75)
|
|
|
( )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
|
|
32bit版MediaCoderの場合は、両環境間で大差なかったが・・・
64ビット版は、明らかに
32ビット版よりも高速変換が可能だった
\(^o^)/
なお、v0.7.2のMediaCoderのCUDA
H.264変換は、GPGPUが充分に機能しない為か?
v0.7.1で検討した場合と比べて期待外れの長時間を必要とした。
収録時間 1時間54分番組の素材で検討した成績は、
→「64ビット版Windows
7環境でMediaCoderのCUDA H.264変換」 を参照。
|
VI.VirtualDub 32ビット版と64ビット版(AMD64)で圧縮・変換
素材は、解像度14400x1080、収録時間
4分59秒のクリップファイルを
AviUtl で変換した特
別に用意した
Huffyuv_PCM.avi
ファイル。
*VirtualDubは
MPEG2_AC3.tsファイルを読み込めない・・・方策を見出せない。
VirtuaDub 1.9.8ないしVirtuaDub
1.9.8 AMD64(ここから入手)を使用して、
XviD、x264又はffdshow(MPEG-4)で変換。
解像度
14400x1080→640x360(16:9)にリサイズした。
64ビット用コーデックの入手
a)一括入手:こちらの「squid_80」から
AviSynthx64及びそのプラグイン、フィルタ類と共に、
64ビット用エンコーダ(XviD, x264vfw, HuffyuvとLameACM,
AC3ACM)
の入手が可能だ。
今回使用したエンコーダのバージョンは以下の如くで、32ビット用と64ビット用で若干設定
内容が異なるが、ほぼ同じ設定条件で検討した。
|
XviD:32ビット用
v1.2.127,2006.02.25、64ビット用
v1.2.127,2005.04.23
x264vfw64:32ビット用
Core54,2007.01.26、64ビット用
Core36,2005.10.23
Lame MP3:32ビット用
2008.09.24 、64ビット用
2007.08.06
なお、以下も64ビットエンコーダとして利用可能。
b)Lagarith
Lossless Video Codec v1.3.20(ここから入手)の.exeインストーラは、32ビ
ット/64ビット兼用となっており、いずれもインストールされる。
c)ffdshowは別途tryouts revision3124,2009.11.03の32及び64ビット用を使用した。
|
|
Proxy Codec64 v1.00(ここから入手)
64ビット版
VirtuaDub 1.9.8 AMD64が 32ビット用ビデオコーデックを利用出来るように、
Proxy
Codec64を使用し公式ページの記載に準じて登録した。
下図は、VirtuaDub
1.9.8 AMD64で利用可能な映像圧縮コーデックを示す。
32ビット用コーデックは、pxc0〜3...のコーデックとして導入されている。
|
|
成績
|
|
圧縮・変換内容
14400x1080→640x360
|
x32
Vista環境
|
x64
Windows 7環境
|
32bit版
|
64bit版(AMD64)
|
x32用Encoder
|
x64用Encoder
|
Huffyuv→XviD
|
14分33秒
|
14分36秒(x1.0)
|
15分32秒(x1.1)
|
16分03秒(x1.1)
|
Huffyuv→x264
|
17分53秒
|
18分16秒(x1.0)
|
18分08秒(x1.0)
|
19分56秒(x1.1)
|
|
Huffyuv
→ffdshow/MPEG-4 |
16分57秒
|
16分46秒(x0.99)
|
実行せず
|
22分23秒(x1.3)
|
|
|
( )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
|
|
32ビット版VirtuaDubでは両環境間で大差なかった。
64ビット版では、32ビット用コーデックを借用した場合は
32ビット版と大差なかった。
64ビット版で64ビット用エンコーダを利用した場合は、XviD,
x264変換ではやや延長する
傾向にあり、ffdshow Video CodecのMPEG-4で変換した場合は 32%も余分に時間が
掛かってしまった Y (>_<、)Y
|
<蛇足>VirtuaDub
1.9.8 AMD64で変換中に、故意に変換を中止するとハードディスクの
ボリューム(今回はEドライブ)のマウントが解除されて認識出来なくなってしまうトラブル
が発生する事があるようだ(2回発生。再起動してもマウント不可)。
ただ単にハードディスクが破損しかけているのかは不明だが、OS付属ツールの「エラー
チェック」ではチェック・修復を実行出来ず、 Acronis Disk Director Suite10.0
の助
けを必要とした。
もしVirtuaDub
1.9.8 AMD64が真の原因ならば恐ろしくて使用出来ない!(◎_◎)?
|
結果と考察
1)32ビット版動画関連ソフトの変換・編集速度は(AviUtlによる
WMVへの変換以外は)、両環
境で大差なく、残念ながら
OS 32→64 ビット、メモリ 3→6GB としても、32ビット版の動画
関連ソフトの明らかな高速化は認められなかった。
TMPGEnc 4.0 XPress と Corel VideoStudio12
Plusは、やや速い傾向を示したが・・・
微々たる差だった。 フィルタ処理を多用すれば差が見られたのかも知れないが、AviUtlで
5種類のフィルタ処理を行なってみたが差異はみられなかった。
これは、物理メモリを増量するとページングファイルの作成が抑制されて高速化する可能性を、
今回の場合は期待出来なかっただけの理由なのかも知れない?
なお、ある情報ではTMPGEnc 4.0 XPressによる WMVへの変換は 64ビット環境にするだ
けで約20%高速化されたと云うが、今回の成績では 4%にすぎなかった。
|
2)一方、32ビット版のアプリケーションはエミュレートによる動作となるのでパフォーマンスが低
下する可能性があると云うが、極端に遅くなるソフトはなかった。
これは、Windows 7 に搭載されているエミュレーション機能 「WOW64」(Windows-On-
Windows64)の完成度が高く、パフォーマンスの低下が少ない為であろう。
|
3)VirtuaDub
1.9.8 AMD64は 32ビット版と比べて、32ビット用コーデックを借用した場合は
変換速度に大差なかったが、Proxy
Codec64に登録したコーデックのパフォーマンスは若干
低下すると云う情報もある。
残念ながら 64ビット用エンコーダを使用しても期待に反して好成績は得られず、むしろ
ffdshowのMPEG-4で変換した場合は、32ビット版よりも劣る結果となってしまった。
|
4)MediaCoderの64ビット版は、明らかに
32ビット版よりも高速変換が可能だった。
今後はWindows用 HandBrakeの 64ビット対応版(近日リリース予定)についても検証してみ
たい。
|
結語
動画関連ソフトが
64ビット版Windows 7環境において恩恵を受けられるのは現状では64ビッ
ト版MediaCoderに限られており、有用な64ビット版アプリの開発が望まれる。
|
<参考>64ビット版Windows 7の他のメリット
1)大量ファイルの転送速度は、64ビットOSで高速化が期待出来ると云うのだが・・・
|
6.22GBの
1動画ファイルをコピーするのに必要な時間
|
|
コピー先のディバイス
|
x32
Windows Vista
環境
|
x64
Windows 7
環境
|
SerialATA接続内臓HDD
|
1分38秒
|
1分23秒(x0.85)
|
USB 2接続外付けHDD
|
3分56秒
|
3分53秒(x0.99)
|
ギガハブ接続外付けHDD
|
10分16秒
|
10分13秒(x0.96)
|
|
|
( )内は、Windows 7環境での変換時間÷Vista環境での変換時間を示す。
内臓ハードデスク間のコピーでは約15%高速化されたが、USB及びLAN接続HDDへのコピ
ーには大差なかった。
|
|
2)マルチスレッド処理(複数プログラムを同時に実行している時の応答)の高速化
SuperFetch機能:よく使うプログラムを前もって空きメモリに転送(先読み)する事でPC
のスピードアップを図ろうという機能。Windows Vistaから搭載された。
Vistaではメモリ食いとなって不評だったが、Windows 7では大容量のメモリの活用と素早
いメモリの解放がされるように改良されていると云う。
64ビット版OSでは大容量のメモリが使えるので、多くのメモリを要求するアプリケーショ
ンや多数のアプリケーションを同時に作動させる際、HDDへのアクセスが 減り快適に使
用出来るようになる筈だ。
|
⇒Windows X-P Modeの快適化
大容量のメモリを消費するので、64ビット版OSでは割り当てメモリの容量を増やせるの
で快適に作動するようになる筈だ。しかし、
Windows VirtualPCでは、Full HD動画の再生は難しく、動画編集に使用出来るパフ
ォーマンスを持ち合わせていない。
⇒VMware Player 3の快適使用
VMware Player 3なら効果を期待出来る→「VMware
Player 3.0 の性能」を参照。
|
なお、いずれの仮想マシンソフトも 64ビット版Windows
7なら64ビットアプリケーションとして
作動する。
|